Column

2005 . 11 . 15

 今日、三島で地鎮祭に出席するために朝東海道線の電車に乗った。今日は今年一番かと思いたくなる位に冷え込んで、家を出て何気なく空気を吸ってそしてはいた。燐とした空気が辺りに立ちこめていて、空は灰色、天気はあまり良くは無かったが、雨が降らなければいいな、等と考えながら駅へ歩いた。東海道線は快調にぐんぐんとばして早川駅を過ぎた頃、パッと視線が開けた。ここのところ、定期的に湯河原での設計打ち合わせの為に東海道線下り列車に乗ることも多いから、それは見慣れた風景のはずだったのに、とても開放的で気持ちが良かった。

 ただ、訳もなく車窓から風景を眺めて「きもちいいな」という気持ちが起きるとき、そこには一体どんな法則があるのだろうか。そんな事を考えた事がむかしあった。たぶん建築を目指してひたすら徹夜を繰り返していた20台前半の頃の日曜の夕方、車に乗って246を海に向かって走っていた時だ。その時、空気はとても透けていた。スケスケだった。気持ちが解き放たれるとはこういう感じだろうな、と物思いにふけながら、たった週一回のわずか1時間だけの海を見るためだけに車を走らせた。

 早川を過ぎて、東海道線が相模湾を一望する場所にさしかかった頃、風景が透けていた。キリッと冷えた空気と、グレーで均一なんだけど微妙なグラデーションを描く水平線が、果てしなく見えないもっと向こうの世界へと心と解き放ってくれた。この湿度の低さからくる透明度の高さと、薄暗い空気のブラインド効果なのだろうか。均一なものにある種の幻覚を見た。そこには透明な物質が有るようだった。その透明な物質は目に見える全てのものを覆い被し、そしてグレーに染めてゆく。その風景はことごとく秩序から開放され、海と空が同化してゆく。色素を失ったモノトーンで均一な世界。そこは安らぎと心の秩序に満ちあふれていた。これから仕事だというのに・・・。

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