Column

2005 . 12 . 13

 11日の日曜日、伊藤寛さんの設計された葉山の住宅のオープンハウスに伺いました。ここ数ヶ月の間、幾つかのオープンハウスのお誘いを頂きながら、全く体が空かない状況で伺う事が出来ず、とても残念な思いをしていましたので、僅かな時間でしたがとても有意義な時間を過ごす事が出来ました。誤解の無い様に説明を加えておくとすれば、我々の主催する「オープンハウス」というのは、巷で見かける客寄せイベントではなく、あくまで限定的なクライアント、もしくは学生、建築家仲間にのみ声をかけて行う場合がほとんどです。勿論、施主のプライバシーの問題を考慮しての事ですが、もう一つは、アカデミックな意味での建築批評を頂く事を目的としているからです。

 さて、伊藤寛さんの住宅を実際に見るのははじめてでしたが、印象としては非常に「家」として必要なデザインを、恣意性を誇張する事なく素直に(これはセンスの必要な技ですが)まとめている部分は好感が持てるところでした。ともすれば、住まいとは何ら関係の無いデザイン性を誇張するあまり、とても肩のこる空間が跋扈する世の中ですから。空間ですが、正八角形の外枠に中に、設備を納めた四角い櫓の様な構造コアが挿入されたカタチ。通常の場合、幾何学形態はそのカタチ自体が非常に強い独立性を持ちますが、日本の木造文化に於いては四角という形態は見慣れたものとして、風景に馴染んで見えます。そこに来て、正八角形ともなれば私の経験ではテーマパークの仮設建築か、はたまたへんてこな展望台かといった、恣意性まる出しの環境破壊的建築物のイメージがどうしてもつきまといます。しかしながら、この住宅にその様な心配は無用でした。一つには黒の板金で覆われた控えめな出で立ちである事と、180度以上のパノラマが期待出来る高台のロケーションという事が、その形態に妙な説得力を持って迫ってきます。ただし、下手な建築家は、この様な手法に出ない事をおすすめします。不定形な敷地に多角形を挿入する事で、敷地の余白をどの様に意味を持たせるか、は偶然の閃きとでも言いましょうか、力のある建築家でなければうまく行くものではありません。内部空間では、とりわけ居間廻りが気に入りました。正八角形と四角形が入れ子構造になっている為、おのおのの出隅がズレて、そこに空間のクビレが生まれます。そこがこの住宅を単なるパノラマビューの居間と一線を画しているところでしょう。場をつくる手法も多々ある訳ですが、外観の出で立ちから構造コア、空間のクビレまで破綻を来す事なくスケールダウンしており、これでなくては、正八角形はやるべきではないな、と思いました。

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