Report

「長良川の家」

2009 . 8 . 11

岐阜県の長良川沿いの傾斜地に建つ家が竣工し、先日竣工写真の撮影を行いました。敷地の半分が平坦で半分が長良川に向かって傾斜する北側斜面の敷地です。はじめて施主に案内されて現地を訪れた時から北に向かって広がる美しい風景が印象的で、是非ここに建てたいと思っていました。普通、敷地の価格決定にはオリエンテーションが大きく影響を与えますが、北側に視線が広がる敷地というのはあまり評価されません。何しろ南に向いて開くことが日本の住宅のプランニングで最も重要と思われていますから。南に向くということはつまり逆光なわけで、北を向けばコントラストが強く鮮やかな風景を見ることが出来るということです。

さて、何はともあれこの敷地、着工してから気が付いたのですが、やたら建物が目立ちます。とても広い長良川ですからずいぶん遠くからでも良く見えました。あまりに見えすぎてちょっと焦りましたが、もともと風景に向かってかなり低く構えた姿勢をとっていたので、いやな目立ち方ではなくむしろ静かな闘志とでも言えばいいのか、強い意志を感じました。まるで他人事の様にも聞こえますが、実際、僕たちもリアルに立ち上がった姿を見るのはクライアントや工務店の方々と同じく初めてなわけで、いろんな発見や感動があるのです。この建物は潔いと思いました。白は自然界からとても浮いた存在なので、市街地でなければ使い方に非常に神経を使いますが、おそらく傾斜地にへばり付くペッタンコなプロポーションとそれに反発するかの如く純白なオブジェクトがうまくバランスしている様に思います。

「立ち方」という言葉を僕はよく使います。与えられた環境の中に、どの様に一つのカタチを置くのか。新奇性や奇抜さとは一線を画したところに存在するそのカタチの在り方をそう呼びます。立ち方は環境と施主の質感から何となく導き出され、模型化される段階でその精度を高めます。図面を引く時はひたすらに霧の中を歩んでいる様でもあり、現場に至って、だんだんにその答えが見えてくるという感じです。どこまで行っても答えなど存在しない世界で仕事をしているんだ、ということを強く実感しました。

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