Report

「茅ヶ崎グランドホテル解体レポート」

2009 . 12 . 28

空の青い季節が帰ってきました。昨年も同じ様なことを書いたような気がしますが、茅ヶ崎の空が一番青いのはこれからの季節です。ところで、134号線を挟んで事務所の向かいに長年建っていた茅ヶ崎グランドホテルが、立替のため今月解体が完了しました。

写真は解体作業が始まった時のものですが、ずっと見慣れた風景と言ってもいい建物がすっぽりと防音ネットに覆われ、立ち上がったそのシュールな姿にしばしうっとりと見上げてしまいました。今までごちゃごちゃとした煙突やアンテナ、窓や装飾の類で覆われていて、それ故に建築としてのスケール感を否応なしに表現していたものが、一切の物事を捨て去った先に残った唯一の巨大な物体と化したのです。光りを受ける面はきちんと受け、影になるべきところは影。まるで僕たちが一番最初につくるスタディー模型の原型の様にも見えます。写真には旗竿やガードレール等、日常的にスケール感のあるものが写っていますので、おおよその大きさを想像して頂くことが出来ますが、それらがもし写っていなければ、この物体のスケールはみごとに失われてしまうでしょう。その姿が結果として普段見慣れない姿として立ち上がり、私にとって瞬間的にある種の芸術作品に見えたのかもしれません。

日常とは、常に我々を取り巻いている物事であり、それ故に日常とはその存在そのものを認識するチャンスが無くなっていくものです。日常と非日常の境界線が露呈したとき、新奇性や奇抜性という芸術性が湧き出します。その瞬間を見逃してはいけない反面、その驚きは普遍的価値を持っているかどうか、我々の目指す本質的な空間の美しさがあるのかどうか判断を余儀なくされます。住宅設計を通じて、私たちが問われているのはそこのところだと思います。

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