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竣工レポート その3

2011 . 9 . 2

3件目の竣工は岐阜の二世帯住宅です。長良川の土手のすぐ下に位置する広々とした敷地の立て替え工事でした。我々アトリエ事務所が取り組む仕事として二世帯住宅の難しいところは、親世帯と子世帯の意見の相違をまとめる共通言語をみつけることかと思います。たとえば希望するデザインの方向性が異なっていたり、そもそも家に対する思い入れに差があることも珍しくありませんから。さて今回のクライアントとは設計を開始するまでに数回の面会を行いましたが、ご両親は家への特別な要望は少なかったように思います。そもそもどんな雰囲気にするのか、という基本的なディレクションは息子夫婦に任せられていましたが、なぜ建築家に依頼するのか、という根源的な部分がとても重要で、そこに求められていたのはおそらく凡庸でなく、一方で奇抜性でもない、存在することの喜びを味わえる建ち方であるとヒヤリングから解釈し、そこにご両親にも解読可能なテーマを入れました。

回遊性のある長い動線に絡まる曲がった路地と中庭と縁側。そのテーマは親と子の付かず離れずの微妙な距離感をつくり出す装置として機能しています。実施設計の打ち合わせ時に、ご両親から「見れば見るほど良く考えてるなぁと思った」と言いながら鉛筆でチェックされた形跡のある図面を見せられた時はびっくりしました。そこまで図面が読めることが普通ではありませんから。なぜなら、曲がった路地から玄関を入ってぐるっと回って2階に上がり、そのままループして1階に下りてまた路地に帰る平面図で、しかもそのあちこちに格子や中庭が絡んで親子間の視線の抜けをコントロールしているのですから、平面図はどんどんややこしくなっていきます。

私がご両親に対して心配していたのは伝統的な家のスケールや部屋数などの要望が出て来ることでしたが、むしろ新たなことへのチャレンジ精神といいますか、むしろ今までに無い家の在り方に対する冒険心がとても強く感じられたのが印象に残っていますし、そのおかげで親子の価値観が1件の住宅に結実したのだと思います。

工事を締めくくる植栽工事は「園三」の田畑さんが担当でした。やはりプロですね。さすがです。今回の住宅は特に植栽のデザインが重要でしたが、木が入る前と後では全然雰囲気が違います。多くの住宅が敷地に対して一杯に建っていて余裕を感じることが出来ませんが、おかげさまで交差点や道に対して樹木のクッションのお陰でとても気持ちの良い景観をつくり出すことが出来たと思っています。

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