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Sequence 竣工レポート

26.01.16

Sequence 竣工レポート

横浜市東急沿線の丘陵地に昨年住宅が竣工いたしました。

当初4宅地で売りに出された土地の3宅地をご購入された敷地はL型をしており、細く急傾斜の道路に面して3mを超える古い擁壁に囲まれていたため、平面と断面計画では高低差の活かし方を、施工面では擁壁の合理的で安全な解体方法と段取りで悩んだプロジェクトでした。
これまで何件も丘庭をつくって来ましたが、多くの場合は平らな土地に立体的な丘を計画的つくるケースです。今回はもともとあった敷地の高低差を活かした丘庭のある家で、丘庭がアプローチも兼ねています。
L型の敷地なので、その形状からしても敷地の奥は道路からは見えません。ですので、まずアプローチの丘庭を登りきったところに玄関があるのですが、そこから先は家の全体像が外からはほとんど分からないはずです。

私がこの家で取り組んだことのひとつは、その敷地の性質を引き受けて、奥へ入っていくと空間が様々に変化しながら展開してゆく迷路の様な構造です。
例えば玄関の間からは4つの選択肢があります。

ひとつは正面の内路地を奥へと進むと左手に暗がりの中に縁側と畳の間があり、陰影のある中庭からやさしい光が床を照らします。
右手には「はなれ」と向き合ったテラスに心地よい風が吹き抜けています。
左手には子供たちの居場所となる空間へ繋がる路地があり、最後の正面右手には2階へ上がる階段があります。この階段に差し掛かると空間全体を包み込むような自然光に満たされておそらく皆が上を見上げるでしょう。ここは例えるならば西欧で見られる立体的な都市の路地です。

階段を上りきると左には毛足の長いカーペットと造り付けのソファーが誘う場があります。床は僅かに持ち上げてあり、そのままごろんと寝転びたくなる重心とテクスチャーに包み込まれる空間です。一方で右側は曲線で囲まれた巨大なキッチンとダイニングテーブルがあり、さらにその先は陽光に満たされた空のテラスが、格子を隔てて遠景へと視線は延長されます。そこから更に施主の寝室へ向かうには木質系の素材に包まれた廊下を通り、最終的に辿り着くといった感じで、とにかく歩きます。
もうひとつ取り組んだことは、サウナルームです。もちろんユニットを置くのではなく、サウナルームをつくりました。洗面室を挟んで右に浴室、左にサウナです。それぞれ強化ガラスの扉で仕切られていて透明性が高い空間としたので、サウナルームから浴室までひと繋がりに見えます。さらにサウナルームは中庭に面しており、その軒先空間にはベンチを設えた水風呂も設置しました。
盛りだくさんの家ですが、それら一連の流れが空間体験を通じて、事後的に見えてくるとよいと考えています。
設計から現場監理を通じてとてもたのしく、頂いた要望が見たことの無い空間や提案につながり、私にとっても有意義な時間でした。
ご依頼頂きありがとうございました。

Column

26.01.16

少し長めの年末年始の休みを利用して、久しぶりに本を1冊読了しました。『時のかたちー事物の歴史をめぐって』です。早稲田の中谷先生が翻訳を手がけていて、サッと読むと特に真ん中付近までは抽象的過ぎて理解が割と困難な本です。で、最初の章は3回読み直してやっと先に進むことが出来たので、時間がかかりました。本来そんな大げさに書くほどのことでもないのですが、年々、仕事に追われて、と言いますか精神的な余裕度が少ないのか、読書量は確実に減っているような気がします。週末は休みならランニングに2時間半費やしますし、特にこの季節は日没が早く、日中に自然光の元でゆったりと読書することが困難なのも理由かもしれません。この何日かは日中では全然時間が足りず、珍しく夜も読書していましたけど、本当は夜の読書は好きではありません。電灯の下での読書はどうしても閉塞感があって、心地の良い読書体験となりにくい気がします。少し前に古い文庫本のほこりをはらって、川端康成の小説を3冊まとめ読みしたこともありましたが、内容に加えて読書する季節の太陽光が生み出す木陰や中庭を吹き抜ける風、モミジの揺らぎなど、環境全てが追体験として感想に影響を与える気がします。一方で私の読む本の大半は自然科学に関連するものですので、電車の中でも読みますが、やはり夜は窮屈な感じがするので読まない様にしています。さて今回の本ですが、主に芸術、美学における歴史の捉え方を見直しています。私が大好きなジャンルに気候学や地理学があるのですが、例えば高校時代に習った歴史というのは人と人の因果ばかりが語られていました。でも時も下って炭素同位体計測による正確な気候変動が分かってくると、歴史を動かした主原因に地球規模での気候変動が関係していたことが分かってきます。あるいは地理学的要素もそういった歴史の捉え方が大きく変わってきた要素ですが、この本では主に芸術に関連する事物の歴史をひとが創り出す偶然の出来事として捉えるのではなく時間の経過とともに不可逆的に変化してゆく過程として捉えています。ですので始まりと終わりもある一連の動体、ひとが意識することの出来ない大きな流れの中に事物の変遷、本質をとらえるというものです。刺激になります。