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船橋の家竣工レポート

18/10/17

長閑な住宅街の一角、斜面に面した眺めのよい住宅が竣工いたしました。土地の視察から始まりもうすぐ2年経ちます。当初、この土地は樹木が茂る急傾斜地に面して古家がいっぱいに建っており、しかも傾斜の直下には住宅の建ち並びもあったため、難易度の高さ故に売りに出てからそれなりの歳月を経ている様でした。私はクライアントに購入頂くかどうかの判断材料として、傾斜断面図の作成に取りかかり、安息角(自然傾斜角ともいいます)まで斜面を削った場合の土地の状況を作図し、さらに信頼のおける工務店にその土工事の見積もりを依頼しました。結果的に土地価格も交渉により下がったため、予算計画にも合致し、購入に踏み切ったという経緯があります。
傾斜部も含めた敷地はゆとりがあり、傾斜がそのまま屋内のスキップフロアーへと続く様な、平屋の住宅です。実は床下収納として将来は部屋になる空間がスキップフロアーの下にありますので、法的には2階建てですが、伸びやかに深く張り出した庇のプロポーションから、ほぼ平屋に見える立ち方をしています。景観的にも、あるいは丘の上に建つ家の様相からも、通常の2階建てプロポーションは当初から想定しませんでした。スキップフロアーの大階段に座ると、視線は遠くまで延びます。丘には点景としての常緑樹と落葉樹を植樹し、10年以上の歳月を掛けて、丘の新たな風景を創りだしてくれるはずです。

この住宅の特徴は、眺望のある敷地に建つにも関わらず中庭も計画したことです。しかも中庭には廊下を兼ねた縁側があり、縁側に面して洗面、浴室、トイレが設置されています。さらに、この縁側を通って、その先にある別棟の寝室と子供たちの居場所である勉強の間やロフトへと繋がります。主旨としては様々ですが、私が何よりも実現したかったことは2つあります。一つは、眺望とは異なる安心感のある中庭の風景を創りたいと思ったこと。もう一つは日常生活のシーンに外部空間を取り込みたかったことです。いずれも周辺に漂う穏やかな地域性を正しく反映させるための手法です。


縁側を通って屋内を移動する住宅は私の設計では割と多く、そういった非日常的な出来事を楽しみながら享受して頂けることが想定されるクライアントには、積極的に提案するようにしていますが、もちろん敷地の状況やコスト条件も絡みます。この住宅では眺望に面する開口部や、中庭に面する開口部など、多くの部位でacaaがデザインしたオリジナルの木製建具を実現することが出来ましたので、その意味では周囲との関係性をきちんと生活に反映することが出来たと思います。
初めてお会いしてから早いもので2年の月日が経とうとしています。素晴らしいクライアントと土地との出会いに感謝いたします。

Column

18/08/10

以前無駄について書きましたが、その続きを書きたいと思います。

都市生活に慣れてくると、人が意識的に創り出したもの以外の物や、あるいはその存在の仕方に対して、不合理や無意味さを感じてしまい、無駄だなと考えたりしがちです。理由は繰り返しになりますが、人の意識が創り出したものではないからなのですが、実は人(つまりあなた自身)も人が意識的に創り出した存在ではなく、何億年もかけて、気がついたら存在してしまっていた存在なので、自然です。でも自分を無駄な存在と考える人はそれほどいるわけではなくて、ほぼ皆さんそのストレスを外部に投影しがちです。

例えば雑草。

雑草という草は無くて、全て植物としての長い歴史を持っていて名称もあるのですが、造園家が計画的に植えた花や山野草、芝生以外に、意図せず生えてきてしまった草、つまり自然は全て無駄で邪魔なものと考えるのが、つまり現代人と言えます。現代人とは即ち都会人と言い換えてもよいほどに、日本は全て都市化してしまいました。本当の田舎人はもう絶滅危惧種ではないでしょうか。

改めて言うまでもなく、自然は必然です。地形の起伏も、道を阻む河も当然自然ですから、その存在は人知を越えた合理性と必然性に満ちているはずです。もしそうでなければ、とっくに淘汰され変形され、落ち着くところに落ち着いているはずで、現代を生きる我々は、常に進行形でその合理性の海を泳いでいます。いつもその波に逆らって泳いでいるので、災害も起こります。どうにもなりませんが、そういった原理は頭の片隅に持ち続けていても損はしないと思います。