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鵠沼の住居兼小ホール 竣工レポート

19/08/30


この春、藤沢市の江ノ電沿いにピアノの先生のための住居兼小ホールが竣工いたしました。ご子息さんとお母さんもご一緒にお住まいになりますので、小さいながらも同居型二世帯住宅と言えます。
しかも小ホールは本格的な防音性能を兼ね備えていますので、その点について報告させて頂きます。通常、ピアノ教室をはじめとする防音室は幾つかの専門業者がほぼ一手に引き受けている様なので(設計を始めて知りました・・)、クライアントが使っていた教室も以前そのうちの一社に依頼したものでした。その様な理由から設計中に5~6社ほどヒヤリングを行いましたが、共通して言えることは驚くほど高額であるということ。
しかも私が音響的理由から斜めの壁と天井を実現したかったので(つまり単純な四角ではない空間ということ)、高額であるだけでなく、商品枠では施工出来ないと言われた業者もあったくらでした。しかも、私がしつこく細かくテクニカル的な内容を聞き出そうとすると、各社とも「特殊な金物」とか「特殊な素材」といった常套句を持ち出して、詳細を隠します。そのような理由から、もはや専門業者に依頼する理由もなくなり、覚悟を決めて我々が集めることが出来る全ての情報をOEMと思われる素材メーカー、金物メーカーから掻き集め、遮音性能を実現するためのあらゆる手段を講じた詳細設計を行いました。その結果、専門業者の提示した工事金額の1/3でより高性能で自由な形のホールを実現することが出来たのです。(実際、これで5百万以上も安くなりました)もちろん、そこには日頃から気心知れた工務店による監督と大工の存在が欠かせません。
専門業者による専門性とはこの場合、遮音保証という人の弱みにつけこんだ商売の囲い込みに他ならず、本来のテクノロジーはもっと広く一般に開放されなければなりません。真面目に考えるほどに我々はそれを理解し応用し適用することが出来るはずなのです。設計者がそれを専門業者に丸投げするのではなく、施主のためにそのテクノロジーを自らの力で引き寄せる努力をしなければなりません。それをしなければ予算オーバーでこの家とホールは実現していませんでしたので、やはりその差は大きいのです。兎も角、その様な我々のチャレンジを暖かく見守っていただいたクライアントとの出会いは宝物でした。有り難うございます。

Column

19/08/30

月日の経つのは早いものです。様々なことに追われて何時も更新が滞ってしまいます。ところでacaaでは昨年から、竣工後半年から一年ほど経ってから竣工写真を撮影するようにしましたので、ホームページ上には近作があまり掲載されていません。理由はできるだけ生活の雰囲気を出して撮影したいということですが、1年点検を兼ねて撮影するときなども、どの家も大変綺麗にお住まい頂いていますので、嬉しくなります。我々の手がけた多くの家がWEBサイトや雑誌メディア等の取材をお引き受けいただく機会があるのですが、その様な中でも家具や小物や食器や敷物などから、家と調和しながらクライアントの個性が見え隠れする辺りに、住まわれている家としての趣と美しさを感じます。例えば、とても小さくて籠もり感のある居場所をつくったとしても、そこに人の気配を感じなければ味気ないものです。ということは、私たちが計画している空間というのは、当然ですが人が居るための場所なわけです。それは当然と思われるでしょうが、世の中は本当にそうですかね。量産される住宅やマンションのほぼ全ては、n-LDKプランと言いまして、一つの大きな部屋と複数の小さな部屋を廊下で繋いだだけの家ですから、それは本当に設計が楽で、そこに人が居てほしいというリアルな想像力と計画性を伴ってはいません。面積と数だけが価値を計る物差しですから、その空間と動物身体としてのひとの尺度の適合性や、状況によって変化する場の選択性の豊富さということは一切考慮されません。そしてそこに人が住んでいるという風景は、引っ越しした後に置かれるソファーやテレビが担保するわけで、空間はいつも無表情で無性格なものです。ソファーやテレビを責めるつもりはありませんが、規格化された工業製品のような家に、ずっと住み続けてよいと思える趣きが宿るのでしょうか。