いろんな方が事務所へお出でになります。アプローチ方法についてはメールを下さる方が多いです。電話をかけていらっしゃる方もたまにいらっしゃいます。土地探しの最中の方、ハウスメーカーと迷っていらっしゃる方、設計者を選定中の方、最初から依頼の意志を固めていらっしゃる方など、本当に様々です。年齢も20代から70代くらいまで、幅広くいらっしゃいます。
メールで幾つかご質問をいただくことも多いので、その都度出来る範囲でお答えいたしますが、結局会ってしまった方が早いので、日時を合わせて直接会って話をする機会を設ける様にしています。
面談を行う場所ですが、遠距離である場合など特殊な事情がなければacaaにて行っております。なぜかといいますと、「建築家の選定」という立場をわきまえ、我々の仕事の内容やアトリエの風景など、俯瞰して頂くためです。例えば模型や図面を見て頂きます。多くの方が緻密に造られた建築模型を目にすることは初めての経験でしょうし、同じく我々の作成する数十頁にわたるA2版設計図面を見ることも初めてのはずです。その経験から我々の仕事量とその密度、設計にかかる期間についてご納得頂けましたらとても嬉しく思います。
それから、現在のacaaはお世辞にも広いとは言えない(つまりとても狭い)事務所で作業を行っております。狭い事務所内に書籍と模型が溢れかえり、さらに全スタッフがそこで仕事をしております。模型制作も打ち合わせもそこで行います。良くも悪くも、創作の場としての雰囲気を感じて頂きたいと思っております。
面談の場では我々が設計に取り組む時に特に重要と考えていることをご説明いたします。概略だけ申し上げますと、
お客様がご質問を用意されていらっしゃる場合もあります。例えば・・・
上記した内容で、およそ2時間から長い時で3時間程度、お時間を頂いておりますが、お客様自身の要望や境遇について我々がヒヤリングすることはこの時点では致しません。やはり、面談の場では我々がどういったスタンスで設計に望んでいるか、という建築家選定に必要な情報をきちんと提供することと、その姿勢を通じて人間的なマッチングを審査して頂くことが何より重要と考えておりますので。もちろん敷地図をお持ちになられた場合については、敷地の状況をお聞きしてコメントを差し上げることはよくあります。
一度面談したけれどまだ迷う、あるいは最終決定に向けてもう一度会いたい、といった場合が多いと思います。たまに話題に上るのですが、私は「住宅設計に関して」コンペは一切参加いたしませんし、設計契約前にプラン(基本構想案)を作成して差し上げることはお断りしているのが実情です。それが有料であっても・・・。なぜかと言いますと、提出されたプランで設計者を選定するのではなく、設計者の思想と人柄的なマッチングが施主の希望する家つくりに最も重要だと考えているからです。表層的な意味でのデザインは施主の好みよるわけですから、ある程度の選定は雑誌やウエブサイトを通じて選定して頂けると思います。ですがそこから先の設計の本質的なところについては、やはり設計者の考えていることや人柄が大きく空間に影響を与えます。私たちの話をお聞き頂いて、そこのところを審査して頂きたいと思っています。
もう一つの理由は、今ご指名いただいて取り組んでいる仕事に対して、小さいながらも事務所の力を出し尽くすためにその様にせざるを得ないと考えているからです。
尚、住宅以外の用途の依頼でしたら、状況判断によっては設計契約前のプラン作成等について施主の希望に添えるように検討させて頂いております。
というわけで、設計者の選定時にご依頼があれば何度でも時間をつくってお会いしますし、ご希望でしたら土地を一緒に探したり、候補地を見に行ったりしてコメントを差し上げたりしています。その上で設計者としてご指名いただけますと幸いです。
面談の場であったり後日のメールであったり様々ですが、acaaへ設計をご依頼いただく意志決定のお言葉をいただきます。そうしましたら、日程調整を行ってお客様のご自宅を訪ねておよそ以下のことを行います。
尚、敷地探しについてですが、一般的な問題のない敷地でしたらいいのですが、不整形、傾斜地、山間部ですと制度上のハードルも含めていろいろな問題があります。考え方をシフトして、より安く、より楽しく設計を進めるためにも、我々と一緒に敷地探しを行うことをお勧めいたします。
設計契約を締結する前には契約書(案)を事前にお送りして内容を確認して頂きます。 なお、設計と現場監理の報酬総額は<意匠設計報酬>+<構造設計報酬>となっております。 意匠設計報酬の標準設計報酬は400万円です。工事費(税別)が2858万を超えた場合は、工事規模によって変動しますが、工事費(税別)の14%が目安となります。 構造計算費用とは構造家に支払う報酬のことで、こちらは一般的な住宅規模でしたらおよそ工事費(税別)の1.5%が目安となります。
設計契約を頂いてから、平均で1.5ヶ月~2ヶ月お時間をいただいてプレゼンテーションをいたします。場所は住宅のご依頼でしたらお客様のご自宅が多いですが、希望があればどこでも構いません。お客様の職場でもacaaでも。
プレゼンテーションには、予算計画書、平面図、断面図、立面図、それから模型を作成いたします。模型は1/100スケールにて作成します。このスケールには実はこだわりがあって、手に乗るサイズといった感じで、建築の「建ち方」をチャーミングに表現し、全体像をきちんとご理解いただくためにはこのスケールでなければならないのです。もっと大きな模型を作ることは出来ますが、詳細に目が行ってしまうと本質が見落とされてしまう恐れがありますので、とにかく最初に見ていただく模型は1/100で作成いたします。
とても重要なこととして、我々はプレゼンテーション時に複数案をお持ちすることはいたしません。たった1案だけです。それも、長時間考え抜いた1案だけモデル化してお持ちいたします。正直言いまして、様々な条件を満たしながら、さらにお客様の言葉にすることが出来ない想像を超えた一つのモデルを見つけるために四苦八苦し、やっとのことで作成しております。つまり、これが我々の精一杯なのです。お客様のご意見をお聞きし、そのまま次のステップへ進むことが多いですが、変更希望の内容次第ではプレゼンテーション案を最初から組み直す作業を行います。
プレゼンテーションは特別なイベントです。プレゼンテーション案の元になるアイデアについては僕が電車の中や、夜中に家で考える(スケッチを行いながら)ことが多いです。一ヶ月を過ぎたあたりからだんだん焦り始めますが、全てを満たしながらさらにその上に飛躍するたった一つのモデルを見つけるためには僕自身もひたすら考え続けるしかないので、確実な期限のお約束をしづらいのですが。
ところでプレゼンテーション時にお持ちする予算計画書ですが、頂いていた予算に対して諸経費を差し引いて、最終的に工事費として幾らの予算を見込めるかという予測が我々にとっての基本構想を行う上でとても重要であり、建築規模決定に大きな影響を与えますので作成して御確認いただく様にしています。
プレゼンテーション案を気に入っていただければ実施設計に入ります。期間は住宅かそうでないか、あるいは規模によっても大きく異なりますが、一般的な規模の住宅でしたら3~4ヶ月です。実施設計では詳細な図面の作成に入りますが、最初は平面詳細図を作成し、その後、断面詳細図をひたすら描き続け、断面詳細図だけでA2サイズで15枚以上描くことが多いです。お客様との打ち合わせは2~4週間に1回のピッチで繰り返していきます。その間に1/50スケールの模型を作成し、打ち合わせによって仕上げや色のイメージが重要な場合は色をつけていくことも多いです。
何を打ち合わせるかについてですが、基本的には我々が描いた図面を元にして、その都度必要な内容をこちらから提案して議題に乗せます。具体的には詳細な平面図、仕上げ、建具、給排水計画、換気計画、照明計画、外構、家具等々、要するに全てをお打ち合わせしてそれを図面に反映させていきます。
実施設計を開始してからおよそ2ヶ月経過したころ、「概算見積り」を仮決めした工務店に依頼して算出していただきます。工務店はacaaにとって過去にお付き合いのある工務店だったり、大学の講師仲間、私の先生からの紹介だったり様々ですが、建築家との付き合いが多い工務店に集中します。概算が出てくるまでの期間は長くて3週間程度でしょうか。概算は複数の工務店に依頼することがあります。特に初めての地域で仕事をする場合は工務店の選定という意味で数社。付き合いの深い工務店の場合は1社に絞って依頼することもよくあります。金額がもちろん一番重要ですが、他にも担当となる人の社内的な立場や対応、見積もり内容の詳細さ等を拝見し、一緒に仕事が出来る工務店かどうか見極める必要がありますので、その選定材料という意味でも概算を依頼することは重要です。
設計が終了しましたら、工務店に本見積もりの依頼を行います。一般的な規模の住宅でしたらacaaでは競争入札は行っておりません。概算の数字や対応等をみて工務店を1社に絞って本見積もりを依頼します。理由は安値競争ではなく、きちんと根拠を持って予定金額に近づける努力を施工者も巻き込みながら一緒に考えることでより合理的な発想が出来、適正価格にいち早く近づくことが出来るからです。
さらに、最も重要なこととして工事中から竣工後のメンテナンスに至る施主と施工者のコミュニケーションをより円滑にするためには、やはり見積もりを依頼する時点で「予算はこの金額です。お願いします。」という姿勢が我々にも必要なのだろうと思います。作ってくれる人があっての建築です。競争かけて値切るのではなく施工者自身にも適正価格を導き出す努力が必要です。その様な姿勢で臨めば結果として現場のやる気も出てくるというものでしょうし、建築のクオリティーも上がると信じています。
尚、住宅以外の用途や予算規模が大きくなれば、施工者によって見積金額の誤差も大きくなりますので、我々自身が適正価格を確認する意味で数社に競争入札に参加していただいて施工者の選定を行っております。
本見積もりの調整、ネゴが終了し、工事金額や支払い条件の合意が得られれば施工者と施主の間に工事請負契約を締結していただきます。一般的な住宅ですと工事請負契約当日中に地鎮祭を執り行い、即着工とさせていただいております。
工事期間について、世間に広く普及している量産住宅とは大きく異なり、実質工事期間として狭小物件であっても5ヶ月半は必要です。その後、法定検査、施主検査、撮影、施主の同意が得られればオープンハウス等を経て竣工、引き渡しへと至りますので、全部合わせると最低でも6ヶ月以上要することが多いです。規模が大きかったり住宅以外の用途ですとさらに工期が伸びることが多いと思います。
工期は短いほど良い、という考え方はある意味正しいですが、根本的な部分では間違いです。工事中、皆が一生懸命やって時間がかかるのですから、それだけ手間暇かけて作り上げているということであり、それ以上の財産はないでしょう、と私は言いたいと思います。もちろん設計監理として現場へ乗り込む我々も、工期が長ければ長いほどに経費がかかり、結果として全く儲かりません。
ですがこれは冗談ではなく、建築のクオリティーを上げるための労力は惜しまずやることが我々の存在価値でもありますので、そこは譲れません。この考え方は工務店側にも当てはまるから大切なのです。全ての施主にとって建築は大きな買い物ですから、一ヶ月でも多くの貴重な時間を施主からいただいて、じっくりと工事を進めたいといつも思っています。