Column

08/08/12

 7月の終わりの頃、東京デザイナー学院の学生を私の事務所に呼んで課題のプレゼンテーションを行った。はっきり言ってしまえば、課題が授業内では完成しなかったために、採点を1週先延ばしにしてあげただけのことだが。狭い事務所に大きな模型が複数並んだ風景を見ていてあらためて思った。やっぱり建築には地形が必要だな、と。

その課題は緩やかな傾斜のある別荘地が立地となっているから、学生は建築本体も勿論だが、傾斜した地形の模型も当然ながらつくらなければならない。地形があって建築がある。建築は水平と垂直が原則となっているから平坦な敷地の方が作るには何かと都合がいいのだが、それがとても平凡に見えてくることがある。平凡な敷地に平凡な建物。それが日本の風景。都市化していく過程で、人は便利なものを追求してしまうものだから、傾斜よりは平坦を。へんてこなカタチ(自然発生的)よりは四角(計画的)を、善しとする癖がある。何かを構想するとき、実はそういった人が造り上げた成果物が邪魔をすることがたくさんあって、たとえそこが平坦で四角い敷地だったとしても、僕はふわっと夢を見る様な気持ちで幼年期から蓄積された心象風景をもとに、スケッチを進めていきたい。

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